前編

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二人の目が合い、しばらく見つめ合うと、 「連れて行こうか」 「連れて行って」 どちらからともなく、同じようなセリフを口に出した。 「私、あんまり役に立たないけど、ちょっとの痛みだったら、治せるから」 「いい、自分を役に立たないとか卑下するな。片腕の俺も、おまえとさほど変わらん。だがな、」 と、アッシュが左腕を差し伸ばす。 「一つしかない腕でも、こうして抱いてやることくらいはできる」 片腕に力強く抱かれ、「うん……」と、チュチュが頷く。 「私も、魔法は得意じゃないけど、こうやってあなたを瘉すことはできるから」 ぎゅーっと抱きつくチュチュに、 「言うな、おまえ」 照れたようにアッシュが呟く。 「二人でいれば、補い合えるものもあるかもしれん。ほら、行くぞ」 互いの手をしっかりと掴み合い、足並みを揃えて歩き出すと、()(ばゆ)い月明かりと降るように瞬く煌星(きらぼし)が、二人の進む先を照らした──。
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