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二人の目が合い、しばらく見つめ合うと、
「連れて行こうか」
「連れて行って」
どちらからともなく、同じようなセリフを口に出した。
「私、あんまり役に立たないけど、ちょっとの痛みだったら、治せるから」
「いい、自分を役に立たないとか卑下するな。片腕の俺も、おまえとさほど変わらん。だがな、」
と、アッシュが左腕を差し伸ばす。
「一つしかない腕でも、こうして抱いてやることくらいはできる」
片腕に力強く抱かれ、「うん……」と、チュチュが頷く。
「私も、魔法は得意じゃないけど、こうやってあなたを瘉すことはできるから」
ぎゅーっと抱きつくチュチュに、
「言うな、おまえ」
照れたようにアッシュが呟く。
「二人でいれば、補い合えるものもあるかもしれん。ほら、行くぞ」
互いの手をしっかりと掴み合い、足並みを揃えて歩き出すと、目映い月明かりと降るように瞬く煌星が、二人の進む先を照らした──。
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