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──と、その瞬間
ガサガサと葉っぱを揺らす音が響き、何か現れたのかと、アッシュが咄嗟に剣を構えた。
だが上から落ちて来たのは、予想だにしない物だった。
「……これ、卵?」
落下物を両手で受けたチュチュが、口を開く。
「そう、みたいだな。見たところ、翼竜の卵のようだが、どうする? 食うか?」
アッシュの言ったことに、「食うなんて!!」と、チュチュが猛反発をする。
「ハッ、いきなり食うもないか」
頭を掻いたアッシュだったが、
「けどこのままにしておいても、他の魔物に食われるだけだろう。まして巣に返してやっても、一度人間が手にしたもんは、もう野生の親は育てない」
そう正論を話して聞かせた。
「……育ててもらえないの? もう……」
チュチュが悲しげに声を落とす。
「ああ、酷だが、人間臭いもんは、親の竜とて見捨てるからな」
「そう……なんだ」
さらに悲しそうに落ち込むチュチュの手の中で、
不意に、卵の殻にピシッと割れ目が入った。
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