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アッシュは片腕で振りかざした剣で、必死に応戦をするも、皮膚を切り裂く鈎爪と、間断なく吐き出される炎に、明らかに劣勢になっていた。
そうして、彼の一本しかない腕を狙い、ギラつく爪牙が襲いかかった刹那、
見ていることが耐えられなくなったチュチュが、物陰から走り出た。
「アーッシュ!」
声を張り上げて叫び、血まみれの彼の腕に縋りつくと、
「……治してあげる。今治してあげるから……!」
大きく切り裂かれた痕へ、手をかざした。
「ありがとうな……だが、下がっていろ。危ないから」
パーッと光がアッシュの腕を包み、傷が癒えていく。
その閃光に、ドラゴンが目を眩ませた隙をついて、アッシュは火吹きの器官がある喉元を切っ先で貫いた。
ウゴォー……と、苦しげな声を上げ、竜が倒れ伏す。
同時に、永続的ではないチュチュの魔法は解け、アッシュの開いた傷口からは、再び血が噴き出した。
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