前編

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「アッシュ……アッシュ様! あのえっと、チュチュもいっしょに、どうか連れて行ってくれませんか?」 腰に下げた大剣に掛けていたアッシュの左手を、少女がか細い手で離れがたくグッと捕らえた。 「……やめておけ。俺なんかについてきても、ろくなことにはならない」 あっさりと突き放されたチュチュだったが、 「私、癒しの魔法が使えるんです! だからきっとお役に立てると……!」 尚もあきらめずに、食い下がった。 「癒やしの魔法か……。だが、ヒーラーなら、討伐パーティーには引く手あまたのはずだ。なのにこんな危険な場所ではぐれているとは、おまえは継続魔法が使えないのではないか?」 「えっと……、それは……」 素質をあからさまに見抜かれたことに、彼女がにわかに声を詰まらせる──継続魔法とは、永続的に治癒を施せるもので、それが使えないケースでは、その場しのぎな治癒しかできず、ヒーラーとしては異端扱いをされていた。
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