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まさかと視線が釘付けになるチュチュだったが、突如として倒したはずの翼竜が咆哮を上げ、その視線は討伐されたはずの巨体に、また驚いたように向けられた。
「ちぃ……! まだ死んでいなかったのか……奴め!」
再びアッシュが剣を抜こうとすると、
「やめて……!」と、チュチュが剣を制し、叫んだ。
「どうしてだ! やらなければ、俺たちがやられるんだぞ」
起き上がろうとする竜を睨めつけて、アッシュが言う。
「チュチュが、治すから! そしたら助かって、この竜も仲間になってくれるかもしれないし」
「治す? 仲間に? バカを言うんじゃない」
アッシュが低い声で、そう吐き捨てる。
「おまえが治せるのは、一瞬だけだろう。その後はどうするんだ?」
「くり返して治せば、そのうち自然に治癒することだって……」
アッシュに威圧的な目で見つめられ、チュチュの声がだんだん弱々しくなる。
「ダメだ。だいたい治ったところで、こんなどう猛なのは、元より手なづけられない。まして──」
その後に続けられたアッシュの言葉に、チュチュは反論もできずにうなだれるしかなかった。
「──傷を負った竜など、生かしておいても仕方のない、俺たちと同じはぐれものだ」
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