9 何度でも、あなたの名前を

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「うーん……ロマンス小説だったら、愛のキスで呪いが解けるのがお決まりではあるけれど……」  グィニードとしも楽しませてもらった分、奪った代償を返すこと自体はやぶさかではなかったのだが。 「もうちょっと……彼らには苦しんでもらった方が、楽しいかも?」  気まぐれなのは、悪魔の性分。  幸福に緩む二人の空気を一瞥して、グィニードはあっさりとそんな結論を下す。 「それにしても、面白いモノね。相手の姿もわからないままで、好きになるなんて」  そう呟いて首を振るグィニードは、結局人間のことがわからない。わからないからこそ、時々彼らを観察したくなるのだ。 「せっかくワタシのチカラを貸してあげたんだもの、もう少し楽しませてもらうわ」  ――そんなことを口にしながらも、グィニードは薄々察していた。  どんな困難が降り掛かろうと、きっと彼らが挫けることはないのだろうと。  想いが通じ合った彼らに、もう恐れるものなど何もないのだから。  異界へと繋がる鏡は、ただ静かに仲睦まじく寄り添う二人の姿を映し続けている――。
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