3 不相応な婚姻

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 バートン家は、三世代前に爵位が認められたばかりの新興貴族だ。  精力的に流通事業に取り組み、事業を発展させてきた商家。  そのため歴史の浅いバートン家を「成金バートン」と嘲笑う貴族は未だに多い。  だからこその、この婚姻なのだ。  王家は資産的に大きな力を持つバートン家を取り込むことができ、いずれは当主に王子を置くことができる。  国の血流ともいえる流通を担うバートン家を味方につけることの利点は大きい。  そしてバートン家も王家とつながりを持つことが可能となり、王子を迎え入れることで箔がつく。どちらにとっても、都合が良い話。  そして、ハロルドは王太子教育から徹底的に排除されたのであった。  下手に才覚を示されたら、せっかく落ち着いた後継者問題が再燃してしまう。王位継承権を持たない彼は、愚かなぐらいが丁度良い――そんな王家の思惑通り、彼はすくすくと育った。  それはもう、目を覆いたくなる程に我が儘かつ傲慢で無能な男に。  一方のリーシャはその逆だ。元よりその夫となるハロルドに、家を切り盛りする能力は求められていない。その分のしわ寄せが、すべてリーシャの肩にのしかかったのである。  そうして重圧に耐え、婚約者に疎んじられながらもリーシャはひたすらに努力を重ねてくた。その結果が……あのザマだ。 (だからもう、私はかつてのような我慢なんてしてやらない。この人生では、自分のやりたいように過ごすんだ……!)  ぎゅっと唇を引き結び、リーシャは顔を上げる。  せっかく手に入れた人生をやり直すチャンス。好きなことをして自分の人生を貫いてやる――!
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