4 婚約解消への一歩

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4 婚約解消への一歩

「ねぇ貴方。お祖父様に面会の約束を取り付けてもらえるかしら」  ――翌日。  もう名前も忘れた執事に短く告げると、彼は僅かに首を傾げた。 「大旦那様に、ですか。お言葉ですが、旦那様には……」 「当然、内密で。……頼めるかしら?」  はっきりと答えれば、執事は少しだけ驚きを見せるように眉を上げる。  しかし、その端正な顔は少し視界から外しただけで、昨日と同様にリーシャの記憶からあっさりと滑り落ちていった。  声も顔も髪もととのっているというのに、それはまるで()()()()()()()()()()()()()()ようだ。  唯一ゆらめく灰緑の瞳だけが、リーシャの脳裏にしっかりと焼きつく。 「お父様に逆らえない、というのであれば無理は言わないわ。今の話は忘れてちょうだい」  その感覚が薄気味悪くてリーシャが話を切り上げようとしたところで、執事は慇懃な仕草で頭を下げた。 「いいえ、私の主人はお嬢様です。お嬢様のお望みとあらば、全力で応えてみせましょう。私は、貴女の忠実なる下僕(しもべ)ですから」 「…………」  その言葉に、リーシャは思わず言葉を呑み込む。自分に味方がいるということ自体は心強い話だ――その味方が正体不明の存在だということにさえ、目を瞑れば。
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