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「貴方、名前は何というのだっけ」
二日続けて投げ掛けられる不躾な質問にも、執事は穏やかに答えた。
「ツルギです、お嬢様」
「そう……ツルギ。私ね、ハロルド様と婚約を解消しようと思うの」
正体不明の彼がどんな反応をするのか気になって正直に口にした言葉に、ツルギはふわりと唇を綻ばせた。
「よろしいかと存じます」
「貴方、驚かないのね」
「お嬢様が幸せになれるのでしたら、喜ばしいことですから」
さらりと返す主人を想うその言葉に、嘘は感じられない。
優しい視線を向けられて、リーシャは何故か泣きたくなるような胸の痛みを覚えた。
そんな彼女を前に、執事は静かに頭を下げる。
「それでは、大旦那様にお会いするための手配、進めておきます」
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