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「どれ、まずは孫娘との再会の喜び、しっかりと味わせてくれ」
そんなことを言いながら、ジェドは両手を拡げてリーシャを抱き寄せた。
昔から彼が好んでしていた家族間の挨拶だ。
記憶よりも随分と近い位置に祖父の頭があることに驚きながらも、リーシャは懐かしい感触にゆっくりと目を閉じる。
包み込む温かな体温に、思わず涙が出そうになった。
――自分が受け入れられているという安心感。
こんな気持ちになったのは、一体いつ以来だっただろう。
凝り固まった心が解けていくようだ。心が欲していた、家族の温もり。
子供の頃に戻ったような心地で、リーシャは祖父の抱擁を受け止める。
その身体が離れる頃には、リーシャは今までにないほどのゆったりした心持ちになっていた。まるでジェドの魔法に掛かったような心地。
「さぁ、次はツルギ、お前さんだ」
リーシャから離れると、そう言ってジェドはツルギに向かってお茶目な笑みを浮かべる。
「いえ、オレは……」
慌てて身を引こうとするツルギを逃すものかと、ジェドはがっしりとその肩を捉えた。
「お前さんはいつも、ひとりで頑張りすぎる。リーシャのために尽力してくれるのはありがたいが、あまり抱え込みすぎるでない」
そう言いながら、ジェドはやさしくその背を包んでいく。
しばらく硬直していたツルギは、やがて諦めたようにゆったりと目を閉じた。
彼の表情から少しずつ険しさが薄れていく。
彼もまた、リーシャと同じようにジェドの魔法に掛けられたのだろう。
「……過分なお言葉、痛み入ります」
そう返す彼の声は少し掠れていて、そして何かに耐えるように語尾が震えていた。
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