5 祖父との再会

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「そして悪魔召喚といった呪術、儀式はロマの民の専門……もしやハロルドの奴、そんな禁術に手を染めようとしているのか。母親がロマの出身だし、いかにもそんな愚かな行為に手を出しそうじゃが……」  明言は避けて、リーシャは無言で微笑むにとどめた。  あのひと言でそこまで見通すのかと驚きを覚えながらも、表面上は平静を取り繕うのを忘れない。 「まぁ言いたくないということであれば、良かろう。詮索はせぬ」  肩をすくめ、ジェドは最後に締めくくる。 「儂に言わせれば、悪魔召喚はお伽話の迷信じゃ。ただし、それはただのお伽話ではない。人を殺せるだけの力を秘めておる……。気をつけなさい、リーシャ。それに関わるのであれば、その心構えがないと呑まれるぞ」  その言葉を最後に、室内には静寂が訪れた。  ――お伽話。本当に、そうだろうか。  ジェドの最後の言葉を聞いて、リーシャは胸の裡で呟く。  そんなことを言ったら、時を(さかのぼ)るなんてもっと荒唐無稽の話だ。それを身をもって経験している自分にしてみれば、悪魔の存在だって決して否定できるものではない。
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