5 祖父との再会

6/6

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「ありがとうございます、お祖父様。とてもタメになるお話でしたわ」  気を取り直したリーシャが礼を述べると、ジェドはホッとしたように破顔した。 「いやいや、こんな話が少しでも役に立ったのであれば幸いじゃ。……それで? そんなお伽話の情報を聞くためにこのジジィに会いに来たわけではなかろう?」 「はい」  しっかりと前を見据え、リーシャはまっすぐに告げる。 「お祖父様にはお願いがあるのです。私を、()()()()に繋げていただけませんか――」  リーシャの要望を最後まで聞くと、ジェドは大きな声で笑い出した。 「なるほど、面白い! まさか、()に会いたいとは! ……よかろう。この儂に任せなさい」 「ありがとうございます、お祖父様!」  一瞬淑女の礼を取りかけて、リーシャはその動きをやめてジェドに飛びつくように抱きついた。  彼の眉尻が、さらに下がっていくのがわかった。  今目の前に居るのは、もはや人生で大成功を収めたやり手の商人ではない。ただの孫娘に甘い好々爺だ。 「ああ、可愛いリーシャ。いつでもこのジジィに会いにおいで、リーシャ。そなたの幸せを、儂も願っておるよ」 「はい、お祖父様もお元気で」  貴族の礼ではなく、家族の挨拶をして二人は離れる。  屋敷へと帰るリーシャの胸は、今までにない程にぽかぽかと温かくなっていた――。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加