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「いつまでも辛気くさい顔でうつむいているな、茶が不味くなるだろう」
立ち竦むリーシャを苦々しそうに一瞥し、ハロルドは顔をしかめた。
蜂蜜色のブロンドの髪とサファイアのような真っ青の瞳、抜けるような白い肌。高貴な人に相応しい、美しい風貌のハロルド。
それなのに何処か崩れた印象を受けるのは、ひとえに本人の性格の所為だろう。
滲み出る尊大さ、人を人とも思わぬ傲慢さがその視線、その口調から透けて見える。
「こんな女が、俺の婚約者だなんてまったく忌々しい。せいぜい成金自慢のその資産を使って、俺の役に立ってみせろ。そもそも……」
「失礼します、お嬢様。顔色がすぐれませんが、お身体の具合が良くないのでは?」
慇懃な口調ながらも、ハロルドの苦言を遮る声が響いた。
それと同時にがっしりとした体躯の男がハロルドの視線からリーシャを守るように立ち、彼女の手から脈を取りはじめる。
「貴方は……」
見覚えのない姿にリーシャは戸惑いの声を上げるが、執事服に身を包んだその男は意に介さない。
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