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死に戻ってからの僅かな時間であっても、ツルギの存在はリーシャにとって非常に大きなものとなっていた。
常に彼女の傍に控え、彼女の感情に寄り添い、そして的確な助言を口にしてくれるツルギ。
彼がリーシャの人生から消えてしまったら、リーシャは間違いなくひとりぼっちになってしまう。
欠けた半身の正体を知らぬまま、それでも虚しさだけを抱えて生きていく――そんなの想像するだけで身震いがする。
「報告ありがとう、ツルギ」
今日もまた彼と言葉を交わしながら、リーシャはツルギのパーツひとつひとつを丁寧に視線でなぞる。
それでも、その全体を形作る彼の顔は相変わらず掴めないけれど。
「ツルギ、何度でも貴方の名前を教えてね」
――そうやって名前を呼び続けることだけが、彼女にとって唯一彼を忘れないためにできる対抗策だから。
顔がなくても、名前を忘れても、彼は私の大切な執事だ。
向かい合う灰緑のゆらめく瞳がまっすぐにリーシャを映し出した。じっと視線をそらさず、ツルギは真摯に答える。
「もちろんです、お嬢様」
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