7 再びの断罪劇

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 予想外の彼女の言葉に、会場全体が不吉な程にしんと静まり返った。 「な、な……」  告げる言葉が見つからないというように、ハロルドはわなわなと唇を震わせる。 「何を、馬鹿なことを……この婚姻が、そう簡単に覆るわけがない。そうだ、バートン家がそんなこと承知するものか!」  自分でその婚約を破棄しようとしておきながら、ハロルドは平気でそんなことを(のたま)う。 「ああ。だから、私が間に入ったんだ」  新しい第三の声が、この凍りついた会場に割って入った。  その声に振り向いたハロルドは、喘ぐように大きく息をする。 「なっ……貴様は……」 「リロイ王太子殿下!」  ハロルドよりも、周囲の反応の方が早かった。  次々と床に膝をつき、臣下の礼をとり始める取り巻きたち。そんな中でハロルドだけが取り残され、喘ぐように声を絞り出す。 「何故、お前がここに……」  ――リロイ王太子。  ハロルドの弟であり、正妃の長男として王位継承権最上位に認められた存在。  立場的に彼を追い出すこともできず、ハロルドは呆然とその場に立ち尽くすことしかできない。  会場の空気をあっという間に支配してしまったリロイは、涼しい顔で口を開いた。 「今、兄上が挙げていたリーシャ嬢の婚約について、話をするためですよ。貴方とリーシャ嬢との婚約が既に解消されていることは、私が証言しましょう。なにしろ父上に話を繋いだのは、私ですから」 「なんの、権限があって、貴様が……!」  混乱の渦中にありながらもハロルドはリロイを邪魔者と見定め、憤怒に満ちた声で彼に迫った。
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