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予想外の彼女の言葉に、会場全体が不吉な程にしんと静まり返った。
「な、な……」
告げる言葉が見つからないというように、ハロルドはわなわなと唇を震わせる。
「何を、馬鹿なことを……この婚姻が、そう簡単に覆るわけがない。そうだ、バートン家がそんなこと承知するものか!」
自分でその婚約を破棄しようとしておきながら、ハロルドは平気でそんなことを宣う。
「ああ。だから、私が間に入ったんだ」
新しい第三の声が、この凍りついた会場に割って入った。
その声に振り向いたハロルドは、喘ぐように大きく息をする。
「なっ……貴様は……」
「リロイ王太子殿下!」
ハロルドよりも、周囲の反応の方が早かった。
次々と床に膝をつき、臣下の礼をとり始める取り巻きたち。そんな中でハロルドだけが取り残され、喘ぐように声を絞り出す。
「何故、お前がここに……」
――リロイ王太子。
ハロルドの弟であり、正妃の長男として王位継承権最上位に認められた存在。
立場的に彼を追い出すこともできず、ハロルドは呆然とその場に立ち尽くすことしかできない。
会場の空気をあっという間に支配してしまったリロイは、涼しい顔で口を開いた。
「今、兄上が挙げていたリーシャ嬢の婚約について、話をするためですよ。貴方とリーシャ嬢との婚約が既に解消されていることは、私が証言しましょう。なにしろ父上に話を繋いだのは、私ですから」
「なんの、権限があって、貴様が……!」
混乱の渦中にありながらもハロルドはリロイを邪魔者と見定め、憤怒に満ちた声で彼に迫った。
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