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黒いモヤが身体の中に広がるように、不安が彼女の胸に広がっていく。
正体のわからない焦燥感。心拍数が苦しいほどに上がっていく。
息苦しさを覚えながら、リーシャは救いを求めるように盛り上がる会場内を見渡した。
……右。居ない。
……左。居ない。
誰を探しているのかもわからないのに、視線は会場内をうろうろと彷徨う。
「リーシャ嬢!?」
気がつけば、リーシャは踵を返して駆け出していた。
リロイの声が後ろから聞こえるが、振り返る余裕はない。体当たりするように扉を開き、肩で息をしながら彼女は誰かを求めて走る。
走る。走る。走る。
驚いたように彼女を見やる周囲に目線を走らせるが、これだ、と思う人影はなかなか見つからない。それでも、彼女は走り続ける。
――やがて。
「待って!!」
庭の木立に消えようとする背中に向けて、リーシャはあらん限りの声で叫んだのであった。
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