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言葉をなくすツルギを前に、突如現れた男は「よいしょ、と」と召喚陣の中央に沈んでいた半身を引き上げてゆっくりと立ち上がる。
「こんにちは♪ ワタシの名前は、グィニードサガン。グィニードって呼んで頂戴。様付けも要らないから」
「貴方は……」
魂を抜かれたように立ち尽くすツルギに、グィニードと名乗る男は「シィー」と人差し指を唇に当てると、軽くウインクをしてみせる。
「ワタシが何者かなんてツマラナイこと、訊かないでね? 賢いアナタなら、……わかるでショ?」
ニンマリと唇を吊り上げて囁くグィニードの姿は、軽い口調とは裏腹にこの世のものとは思えない程美しい。
均整のとれた肉体に、この世の闇を煎じ詰めたような漆黒の髪。そして日差しの気配を感じさせない蒼白い顔の両側には、捻れたツノが生えている。
見るからに人間ではない、異端の存在。
温度のない視線に射すくめられ、ツルギは背筋に氷を押し当てられたような寒気を覚えてぞくりと身を震わせた。
「……祖父からお聞きしています」
言うべき言葉を考えながら、ツルギは慎重に口を開く。
「悪魔召喚とは、願いを叶える術ではないのだと。これはあくまで『気まぐれな隣人』を呼び寄せる手段で……ここまで払った対価は、それだけのためのものに過ぎないのだと」
「あら、そこまでちゃんと伝承が残っていたなんて驚き。あの王子はそんなコト、ちっとも知らなさそうだったけれど」
揶揄うような言葉と共に、グィニードは首を傾げる。
「それで? アナタは何を考えているのかしら?」
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