8 願いと代償

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 ――リーシャと初めて出会ったあの日に。  彼女はツルギ本人すら諦めていた自分の生命を、拾ってくれた。今まで見つけられなかった己の価値を、見つけてくれた。  それは、彼が初めて手にした救いであった。  だからもう、それだけで十分なのだ。  彼女に忘れられようと、自分がその思い出を忘れることは決してないのだから。  その記憶ひとつには、彼女のことを一生守り抜くだけの価値がある。  ――彼女の中に、自分が居なくても構わない。彼女が幸せに笑えるのなら。  そして……少しだけ贅沢を言うのなら、そんな彼女の姿を見られたらそれで良い。 「提案を受け入れましょう。契約を、お願いします」  静かな声でツルギが答えれば、グィニードはつまらなさそうな顔で片眉を上げる。 「じゃあ、契約成立ね? 観客としてはここで苦悩してもらいたかったところだけれど……まぁ良いワ。……あ、もちろんこの契約のことを口外することも禁止よ? せいぜい、正体不明の存在として彼女に怪しまれなさい」 「お嬢様が救われるなら、そんなこと問題にもなりません」
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