9 何度でも、あなたの名前を

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 リーシャの言葉を聞いて、執事は覚悟を決めたようにリーシャの手を取った。彼の長い指がリーシャの手をゆっくりと確かめるように絡めとっていく。 「えぇ、お嬢様。俺も貴女を愛しています。貴女のためなら、何を失ったって構わない。……約束します、必ず貴女を幸せにすると。そのために、俺はここに居るのだから」  彼の手をしっかり握り返して、リーシャは顔を上げた。  二人の視線が交差し、言葉はなくともお互いの感情が、熱が伝わっていく。  静かに頷いて、リーシャはひと言だけ口にした。 「何度でも、貴方も名前を教えてね」  ええ、と答える彼の声は囁きにすらならず、見つめ合う二人の距離は徐々に近づいて……そして、そっと唇が重なった――。
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