10人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「うーん……ロマンス小説だったら、愛のキスで呪いが解けるのがお決まりではあるけれど……」
グィニードとしも楽しませてもらった分、奪った代償を返すこと自体はやぶさかではなかったのだが。
「もうちょっと……彼らには苦しんでもらった方が、楽しいかも?」
気まぐれなのは、悪魔の性分。
幸福に緩む二人の空気を一瞥して、グィニードはあっさりとそんな結論を下す。
「それにしても、面白いモノね。相手の姿もわからないままで、好きになるなんて」
そう呟いて首を振るグィニードは、結局人間のことがわからない。わからないからこそ、時々彼らを観察したくなるのだ。
「せっかくワタシのチカラを貸してあげたんだもの、もう少し楽しませてもらうわ」
――そんなことを口にしながらも、グィニードは薄々察していた。
どんな困難が降り掛かろうと、きっと彼らが挫けることはないのだろうと。
想いが通じ合った彼らに、もう恐れるものなど何もないのだから。
異界へと繋がる鏡は、ただ静かに仲睦まじく寄り添う二人の姿を映し続けている――。
最初のコメントを投稿しよう!