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「お嬢様のように美しい方など、他には居ないというのに。お嬢様の優美で綺麗な御姿は、流行などに左右されない、絶対のものです」
あまりに買いかぶった男の賛辞に苦笑を浮かべながらリーシャは立ち上がった。
「ありがとう、その言葉だけでも嬉しいわ。ひとまず、自室に下がらせてちょうだい」
「かしこまりました」
リーシャの言葉を聞いて、彼はテキパキとメイドに室内着の手配等を指示しはじめる。
その手際は慣れたもので、彼がこの屋敷で長く働いていることを窺わせた。
(それなのに……どうして、私は彼のことを知らないのかしら……?)
過去に戻ったのだとしたら、知らない人物が居ることは不自然だ。
底知れぬ不安を覚えながら、リーシャはズキズキと痛みを訴えるこめかみを手のひらで押さえて自室へと向かった。
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