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 トラックに乗り込もうとした真崎が呼び止められて光屋に向き合う。ほかの友達は既にそれぞれの車に分乗し、真崎が動き出すのを待っていた。その様子を見ていた彰浩は、今じゃなくても、と焦ったが真崎が、いいから、と目配せするのでそのまま黙って見守ることにした。  ただ何を言うのかは、全く見当がつかない。 「真崎さん、おれに……彰浩さんをください」  光屋はそう言って体を二つに折るように深く頭を下げた。  思ってもみなかった場面に彰浩はびっくりするやら恥ずかしいやらで真っ赤になる。 「ちょっ、光屋くん、何言って……」  彰浩が慌てて止めるが、真崎がくすくすと笑いだし、そうか、と頷いた。 「ホントにまっすぐだな、君は。でも、どうして俺にそんなこと言うんだ?」  表情は穏やかだが、その言葉は真剣だった。彰浩のことを思って言ってくれているのだとすぐに分かって、彰浩はぐっと唇を噛んで光屋の言葉を待った。 「……彰浩さんが、あなたをずっと想ってるってことはわかりました。彰浩さんには好きな人と幸せになってもらいたいとは思っています。でも、おれはどうしても彰浩さんと別れるなんて無理なんです。この一週間、彰浩さん不足でホントに死ぬかと思ったんです」  光屋が不意に彰浩を見やる。彰浩はそのしょげた犬のような目を見て、バカ、と笑った。 「俺、真崎とはなにもないよ。……もう、親友なんだよ」  彰浩が光屋に穏やかに微笑むと、真崎も頷いて口を開いた。 「俺がこの部屋を出て行くのは北の想いがうざいからとか、関係がこじれたからとかじゃないよ。ずっと付き合ってた彼女と結婚するんだよ」  真崎が言うと光屋は本気で驚いて、えぇ、と叫んだ。 「おれ、てっきり彰浩さんと何かあってそれで距離置くためだと……」 「だったら、君に一緒に住めなんて言う訳ないだろ? ちゃんと話さない彰浩も悪いけど、君ももう少し話を聞いてやって」  真崎の言葉に、彰浩と光屋は、はい、とユニゾンで答える。それを見て満足気に頷いた真崎が、さて、と短く息を吐いた。 「光屋くん、さっきの返事だけど」 「はい」 「答えは『全部はやらない』、だ」 「え?」 「俺だって親友の北は大事だし必要なんだよ。だから全部はやれない。それでいいか?」  真崎の問いに、光屋が大きく頷く。 「うん、それならいい。俺が教えられないこととか、与えられないものとか、たくさん北にあげて欲しい。それで、大事にしてやってほしい。君にだから頼めるんだよ」  真崎が言うと光屋は、はい、と頷いた。 「幸せにしてあげていいですか?」  その言葉に真崎が頷く。横で彰浩は穴があったら入りたいくらい恥ずかしかった。  その場面は、やっぱりどう考えても彼女の父親に結婚の許しを貰う姿そのものだったから。――でも、悪い気はしなかった。
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