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BBQという名の…
結局のところ、悪厄だろうが神様だろうが、悪魔や悪霊、八百万の神々その他諸々に至るまで、意識があり魂が宿り、コミュニティーを形成する一員となれば上手くやらなくてはならない訳だ。
このバーベキューパーティーという、山村京都歓迎会にしてもそうだ。
これから先、同じチームとしてやっていくのだから、それなりの計らいをしてやる。
だから忖度して残業して、文句も言わずに従え。
そういうことだろうが、冗談じゃない。
私はいつだって、労基に駆け込む心積りは出来ているのだ。
「大丈夫ですよ、お嬢さん、このチームはホワイトだから」
突然の桂木の言葉に、私は慌てて、
「もお、桂木さん、お人が悪いわ。私はそんなんじゃありませんよ。これまでが酷かっただけですの」
すると、隣で野菜を焼いていた左官屋の男、コードネーム・マッシュが、突き出た腹をポンポンと叩きながら言った。
「なんでえお嬢!見かけによらずしっかりしてやがんなあ!安心しろ、安全配慮義務は徹底してんだ。今の時代、何かとうるさいからな!」
マッシュは江戸っ子らしく、早口で捲し立てた後で豪快に笑っていた。
マッシュの表の家業は左官業だが、裏の顔は、肉体と魂を繋ぐ瑠璃糸を、超極細に仕立てる仕上げ屋である。
瑠璃糸は、細ければ細いほど、活動範囲は広がるのだ。
切れたら勿論、そこで仕舞いである。
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