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さいたま新都心
さいたま新都心駅近くに、国が買い上げた土地があって、そこはさいたまアリーナの裏手にあり、幹線道路や商業施設からは目立たない場所にあった。
外観は、廃墟寸前の洋風長屋に仕立てられてはいるが、これはあくまでもカモフラージュらしい。
実際は、震度7クラスの地震にも耐えらる構造で、アパートの窓は全てが強化ガラス。
建屋全体は核シェルターの役割も担っていた。
玄関入り口を抜けると、一階全てが情報集約室及び会議室で、二階フロアが職員の居住スペース。
地下室には、時空間移動ステーションと呼ばれる島式ホームがあって、1番乗り場と2番乗り場には、キハ58系気動車に模した、国有超光速走馬灯特別快速と、国有超高速走馬灯急行が其々2両編成で停車している。
その奥には運行司令所があり、施設稼働時には司令官と運行管制官、そして作業官が常駐する。
桂木に案内されながらも私は、
「そう言えばこの男、まだ謝ってなくない?」
と、思っていると、桂木が言った。
「お嬢さん、そんなに謝罪にこだわっていては、何れ足元を掬われますよ」
「え、なんでわかるの?」
「図星でしたか」
「あっ!」
私は苦虫を噛み潰したような表情になっていた。
桂木は続けた。
「人間とは、腹の探り合いにたいそうな時間を使います。勿体無いことだ…」
「桂木さん!」
「はい?」
「貴方は、心の中が読めるの?」
「どうでしょう…」
「もお、イジワル!」
「僕はただの人間です。それよりお嬢さんこそ…」
「なにかしら?」
「人の素性を探るのはおよしなさい。しかも、あまり当たってないのは経験不足からかな」
桂木は悪戯っぽく笑っていた。
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