59人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
「おまえのところだと人気があるのは、イーザックさんだよな。彼女もイーザックさん狙いだろうか」
「ど、どうだろうねぇ」
背中に刺さる視線が、またしても深くなっている。クレイに現を抜かす同期も、気がついてしまえば、庶務の彼と同じ顔をすることだろう。
ぞっとしない想像に、アルドリックは、じゃあ、と話を切り上げた。
「悪いけど、僕はここで。その話はまた今度、飲み会のときにでも聞くよ。……力になれるかどうかはわからないけど」
「なんだよ、それ」
嘆かれたところで、「だって、彼女、惚れ薬を持ってたんだよ」と明かすことなどできるはずもない。彼が対象である可能性も、ゼロではないだろうけれど。
「まぁ、とにかく、そういうことだから」
愛想笑いで誤魔化し、背中を向けた直後。深化したエリアスの不機嫌顔に、アルドリックはぎょっとした。
おまけに、総務の女の子が遠巻きに立ち尽くしている。
「ちょ、ちょっと」
エリアスを恐れて、室内に入ることができなかったに違いない。
慌てて彼を入り口から引き離し、ごめんね、と女の子に謝った。そうしてから、仏頂面のエリアスに向き直る。
最初のコメントを投稿しよう!