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「きみは五大魔術師に興味はないの?」
「ない。五大魔術師などと聞こえの良い呼称で崇めているが、人であることをやめたやつらの集まりだ。俺はそんなものになるつもりはない」
それに、と心底不快そうにエリアスが眉を寄せる。
「魔術学院をまともな成績で卒業した魔術師に、あの戦闘狂に好意的な感情を抱く者は少ないと思うが」
「えええ。どういうことなの、それ」
「卒業試験で問答無用に叩きのめされる。――が、教育的見地でなく、個人的な嗜好の末というのが学院生の共通見解だ。演武というレベルではない。そもそも、五大魔術師という大仰な名前を有しているくせに、隣国からほぼ出禁の扱いを食らっているやつだぞ?」
「……できれば、あまり知りたくなかったな」
又聞きの又聞きで、国を離れることができないという噂を聞いたことはあったけれど。国防に専念されていることが理由と思っていたかった。
引きつった愛想笑いを浮かべたアルドリックに、エリアスは淡々と言い募った。
「魔術師だから、五大魔術師だからと言って、盲目的に憧れないほうがいい」
「…………そうだね」
幼かった自分が嬉々として語った魔術師談義を指していると察したために、苦笑いにしかならない。
自分も努力をすれば、一流の魔術師になることができると夢を見ていたころ。魔術師も、五大魔術師も、アルドリックにとって遠い煌めきの憧れだった。
――その憧れにこの子はなったんだなぁ。
エリアス・ヴォルフ。十年に一人の天才と謳われる王国最年少の一級魔術師。ひさしぶりに会ったせいか、子どもたちの憧れを煮詰めた結晶そのものに見える。
疼いたなにかをしまい直し、アルドリックは三度話を切り替えた。冷めてしまった紅茶を飲み切り、にこりと笑いかける。
「とにかく、僕は宮廷の使者としてここに来たわけで。できれば、きみに任務を引き受けてもらいたいのだけど、構わなかったかな」
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