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「お隣のフレグラントルは、取り締まりが厳しいというからね。件の魔術師も東の小国に入ったのだと思うけど」
我が国も厳格にすべきではないのかなぁと思いつつ、「まぁ、とにかく」とアルドリックは報告に戻した。
「ノイマン家のご令嬢の件については、ヴォルフ殿が了承してくれたからよかったよ。さっそくだけど、明日、ノイマン家に向かうつもりでいる」
「承知した。向こうも急いでいるだろうからな。明日の朝、こちらから一報を入れておけば、いきなりだなんだと文句は言わないだろう」
「ありがとう」
ほっとしたアルドリックに、エミールがにやりと口角を上げる。
「しかし、それにしても」
「なに?」
「いや、あのご麗人からよく快諾を引き出したものだと感心してな。うちの人間が訪ねたときは、塔の前ですげなく追い返されたらしいぞ」
指にはめた魔石の指輪を回しながら人の悪い顔で笑うので、アルドリックは、はは、と愛想笑いを浮かべた。
なにをやってるんだ、きみは、と。頭を抱えたい気持ちが半分、渋々でも引き受けただけ良しとせねばならぬか、という諦念がもう半分だ。
「薬草部の魔術師が担当すればいいだろう、とは言っていたけどね」
「違いない」
愉快そうに喉を鳴らしたエミールは、あっさりと事実と認めた。
「うちの上長からすれば、ノイマン家の当主が天才の名前を出したことが幸いだったわけだ。うまくさぼる人だからな」
「やっぱり調合がわからないと、解毒薬をつくることは難しいものなの?」
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