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「ええと、それにしてもひさしぶりだよね」
書物と実験に使うと思しき器具、名称不明の物体が詰まったガラス瓶。そういったものがところ狭しと並ぶ室内を見渡し、アルドリックはエリアスに笑いかけた。
ありがたいことにもてなす意思はあったらしく、彼が無造作に本を除けた空間に、紅茶のカップがふたつ鎮座している。
雑然としたテーブルを挟んだ向こう。ひとりがけのソファーで悠々と足を組んだ状態で、エリアスは口を開いた。
「俺がおまえを寄こせと言った」
「え? あぁ、きみ、人嫌……人見知りだもんね」
だから、自分が任命されたのか。納得して、アルドリックは頷いた。この子らしいと言ってしまえば、それまでの理由である。
なにせ、彼の人嫌いと偏屈ぶりは、小さいころからの筋金入りなのだ。隣人のよしみか、不思議と自分には懐いていたけれど。
――それにしても、小さいころもお人形さんみたいだったけど、すごみのある美形に育ったなぁ。
きれいな長い銀色の髪に、宝石のような青い瞳。くわえて無機物に見えるほどに整った目鼻立ち。
しかも身長まで随分と伸びている。平々凡々で人の良さしか褒められることのない自分とは大違いだ。
天は一物だけでなく、二物三物と惜しみなく彼に与えたに違いない。性格の難は例に漏れたようだが、ご愛敬というやつだろう。
「違う」
いやにはっきりと否定され、アルドリックは丸い瞳を瞬かせた。
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