エピソード1:眠り姫の毒

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「本当におまえは人が良い」 「え?」 「あちらこちらに気配りをして。昔からそうだったが、疲れないのか?」 「いや、これは気配りというか――」  穏便に答えを引き出す方法を考えていただけだったのだけれど。  唯一の目撃者である彼女は、お屋敷でも調査を受けている。その上で小瓶は発見されず、関与も疑われていないのだ。仮定どおり共謀していたとすれば、彼女が何枚も上手ということになる。そうであれば、崩すための切り札が必要だ。  それだけだったんだけどなぁ、と首をひねりたい気分で、アルドリックは説明を取り繕った。なんだか、随分なお人好しと思われているような。 「まぁ、でも、――もし、ミアさんが共謀していて、きみが感知したとおり小瓶を持っているとしたら、彼女に素直に渡してもらうことが解決の近道になるからね」 「尋問するという手もあると思うが。話が早いだろう」 「きみ、北風と太陽の寓話を知っているかな」
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