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――とは言え、ノイマン家の令嬢は小瓶を飲んだという話だったからな。彼女の薬の出どころが学外である可能性は高いわけだが。
そうだね、と。アルドリックは静かに相槌を打った。
――とにかく。女学院のほうは、うちから確認を取ることになった。まぁ、父親がこぞって揉み消そうとするだろうが。
諦め半分というふうに嘆息し、彼はニナ嬢から聞いたというもうひとつを明かした。
――ノイマン家の令嬢については、ミアというメイドに話を聞いたほうがいい。彼女がそのメイドにご執心だったことは、親しい人間のあいだでは周知の事実らしい。ノイマン家の奥方は後妻だそうだから、屋敷内のよりどころだったのかもしれないな。
そうだね、とアルドリックはもう一度同意を示した。すべて想像の域を出ない話だ。だが、もし。エミリア嬢が「眠り姫の毒」でなく、「秘密のキャンディ」を所持していたとしたら。ありもしない小瓶をみなが探していたとしたら。薬を包んでいた紙をミアが隠し持つことは容易かっただろう。
はったりとして利用するには、十分な情報だった。包み紙を探すために、改めて身体を調べる方法もあるだろう。
けれど、自分はもうひとつを切り札に使いたい。強硬手段に訴えるのは、そのあとだ。そう決めて、アルドリックはノイマン家の門を叩いた。
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