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「そんな方は存在しないのです。招き入れることのできるような方は。それに、私とお嬢様は本当にそんな関係ではないのです」
「ミアさん」
「お嬢様が特別に思っていた相手は私なんです」
予想だにしない告白に、こぼれかけた声を呑む。余計なことを一言でももらせば、続きを知ることは叶わない。そうわかったからだ。
心臓の音が届きそうな沈黙のあとで、彼女はそっと口を開いた。
「お嬢様がご結婚を嫌がっておられたことは事実です。けれど、それは、違う殿方を好いていただとか、そういうことではなく。私と特別でいてくださったからなんです。ただ、お嬢様に誓って明言いたしますが、いかがわしいことはひとつもしておりません」
「お互いに、心で思い合っておられたということですね」
本当に好き合っていたのであれば、触れたいと願うことも、それ以上を望むことも、いかがわしいとは思わない。だが、それは、アルドリックの考えだ。子爵家の令嬢の倫理観からすると、「いかがわしい」ことであったのだろう。
慮ったアルドリックに、彼女はうつむきを深くした。
「お嬢様がどうやって薬を手に入れたのかはわかりません。ただ、あの日、お帰りになったお嬢様は、薄桃色の紙に包んだ薬を持っておられました」
ニナ嬢の話にあった「秘密のキャンディ」だろうとアルドリックは想像をした。エミリア嬢はその薬を「眠り姫の毒」と説明したのだという。
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