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「小瓶に入っているものが主流だけれど、成分も効能も同じ、と。そうして、こう仰ったのです。『眠り姫の毒』の噂はあなたも知っているわよね。私はそれを今から飲むわ。そのあとどうしたいかは、あなたが決めてちょうだい」
「……」
「お嬢様は固く決心をしていらっしゃったのだと思います。芯の強い方でしたから。昏倒されたお嬢様は眠っているようにしか見えず、私はどうしていいのかわからなくなりました」
沈黙の反動のように、淡々と彼女は打ち明けた。
彼女とエミリア嬢が思い合う仲だったのであれば、そうでなくとも、目の前で人が倒れたとすれば。取り乱すことは当然のことだ。アルドリックは、静かに続きを促した。
「どうしたらいいのか、ですか」
「ええ。あたりまえに考えれば、すぐに人を呼ぶべきでした。薬を包んでいた紙も、証拠として渡すべきだったのでしょう。あるいは、噂に忠実に口づけを落とせば、大事になる前にお目覚めになったのかもしれません。ですが、私はいずれも選ばなかったのです」
エプロンを掴む彼女の手の甲には、籠った力を示す青筋が浮き上がっている。彼女は懺悔するように声を振り絞った。
「あろうことか、私は、部屋に入ったみなが小瓶が見当たらないと騒ぐ中、小瓶ではなく紙に包まれていたことも、その紙を自分が持っていることも言いませんでした」
おそらく、とアルドリックは思考する。
お嬢様が「眠り姫の毒」を飲んだと彼女はみなに伝えたのだろう。「眠り姫の毒」は小瓶に入っているという共通認識があり、空の瓶があるはずとみなは思い込んだ。彼女は嘘を吐いたわけではない。だが、誤解を解こうともしなかった。
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