62人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
「どうやって聞き出したんだ? それまでずっとだんまりだったわけだろう」
「しつこく尋ねただけだよ」
少しの間を置いて、アルドリックは首を傾げた。
「彼女もいつまでも黙っているわけにいかないとわかっていて――、まぁ、それは、魔術師殿のおかげでもあるんだけど。だから、誰かに話したかったんじゃないかな」
それだけだよ、と苦笑したところで、ひとつを付け足す。
「もちろん、ニナちゃんに教えてもらった話のおかげもあると思うけど。ちょっとは気を許してくれたみたいだったから」
「いくら追い詰められたからと言って、誰にでも吐き出せるわけではないだろう。おまえが担当で良かったんだ」
「そうかな。そうだといいんだけど」
気弱に呟いたアルドリックを見つめ、エミールは口の端を釣り上げた。
「そういうことにしておけばいい。とにもかくにも、解毒薬ができれば、おまえの仕事は一段落だろう。愚痴くらい、いくらでも聞いてやる。飲みに行くか」
友人の気遣いに、ありがとう、と笑いかけようとした瞬間。エリアスが自分を呼んだ。
「アルドリック」
心なしか、苛立ったようにも響く声。表情に出ないだけで、彼も思うところがあったのかもしれない。はい、はい、と慌ててアルドリックは近寄った。
最初のコメントを投稿しよう!