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この国で一番多いというこげ茶の髪を引っ張り、アルドリックは目を伏せた。
「やっぱり、きみはすごいね。僕はきみにはなれないや」
「なにを言う。俺もおまえにはなれない。あたりまえのことだ」
「え……」
至極当然という返事に、エリアスを凝視する。予想もしない返しだったからだ。
「今回の件にしてもそうだ。解毒薬を早期に作ることが叶ったのは、おまえが話を聞き出したからだろう」
「いや、でも、それは」
きみがとんでもない雑なかまをかけた結果というか、なんというか。言葉を詰まらせたアルドリックに、エリアスは淡々と言葉を重ねた。
「おまえが本心で気にかけているとわかったから、素直に打ち明けたんだろう。俺には到底真似することはできない」
「えっと……」
「なんだ?」
中途半端な呼びかけに、不思議そうに瞳が傾く。子どものように澄んだ、青い瞳。その色から逃れるように、アルドリックは視線を落とした。
存在を知っていた、という意味であれば、生まれる前から彼のことは知っていた。
祖母から聞いた話によれば、誕生を心待ちにしていたというし、生まれた彼を見て「弟ができた」といたく喜んだらしい。大きくなるにつれ気難しい部分は増えたけれど、それでも、アルドリックはかわいがっていたつもりだ。自分に魔術師になる器量がなく、この子にはあると知るまでは。
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