エピソード1:眠り姫の毒

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 この国で一番多いというこげ茶の髪を引っ張り、アルドリックは目を伏せた。 「やっぱり、きみはすごいね。僕はきみにはなれないや」 「なにを言う。俺もおまえにはなれない。あたりまえのことだ」 「え……」  至極当然という返事に、エリアスを凝視する。予想もしない返しだったからだ。 「今回の件にしてもそうだ。解毒薬を早期に作ることが叶ったのは、おまえが話を聞き出したからだろう」 「いや、でも、それは」  きみがとんでもない雑なかまをかけた結果というか、なんというか。言葉を詰まらせたアルドリックに、エリアスは淡々と言葉を重ねた。 「おまえが本心で気にかけているとわかったから、素直に打ち明けたんだろう。俺には到底真似することはできない」 「えっと……」 「なんだ?」  中途半端な呼びかけに、不思議そうに瞳が傾く。子どものように澄んだ、青い瞳。その色から逃れるように、アルドリックは視線を落とした。  存在を知っていた、という意味であれば、生まれる前から彼のことは知っていた。  祖母から聞いた話によれば、誕生を心待ちにしていたというし、生まれた彼を見て「弟ができた」といたく喜んだらしい。大きくなるにつれ気難しい部分は増えたけれど、それでも、アルドリックはかわいがっていたつもりだ。自分に魔術師になる器量がなく、この子にはあると知るまでは。
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