61人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
ひとりが好きな子どもなのだと思っていた。自立心が強く、少しばかり変わっていて、けれど、特別な才を持つ子ども。
自分が必要以上に構う必要はないと思い決めて、距離を取った。自分を守るために。それなのに。
――そんなふうに、思ってたんだなぁ。
うれしいやら、みっともないやらで、言葉はなにも出なかった。懐かしい声が頭の内側で響く。声変わりをする前のエリアスの声だ。
――おまえが俺になれるわけがないだろう。
魔術師になる才能がないとわかったとき、心配する祖母にも、友人にも、アルドリックは弱音を吐くことができなかった。
大丈夫、と。半ばわかっていたことだから、と。平気な顔で笑った。そのくせ、その日の夜。自分の部屋を訪れたエリアスに泣き言を漏らしたのだ。慰めてくれることを期待して。でも、やっぱり気恥ずかしくて、誤魔化すように笑った。
――エリはすごいよ。きっとすごい魔術師になれる。僕はエリになれないや。
そう強がった直後の返答だった。ストレートな言葉に、アルドリックは傷ついた。
検査がまだでも彼に才があることは明らかで、その彼に「自分のようになれない」と断言されたことが悔しくて、悲しかった。
けれど、自分が卑下た受け取り方をしただけだったのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!