エピソード1:眠り姫の毒

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 ひとりが好きな子どもなのだと思っていた。自立心が強く、少しばかり変わっていて、けれど、特別な才を持つ子ども。  自分が必要以上に構う必要はないと思い決めて、距離を取った。自分を守るために。それなのに。  ――そんなふうに、思ってたんだなぁ。    うれしいやら、みっともないやらで、言葉はなにも出なかった。懐かしい声が頭の内側で響く。声変わりをする前のエリアスの声だ。  ――おまえが俺になれるわけがないだろう。  魔術師になる才能がないとわかったとき、心配する祖母にも、友人にも、アルドリックは弱音を吐くことができなかった。  大丈夫、と。半ばわかっていたことだから、と。平気な顔で笑った。そのくせ、その日の夜。自分の部屋を訪れたエリアスに泣き言を漏らしたのだ。慰めてくれることを期待して。でも、やっぱり気恥ずかしくて、誤魔化すように笑った。  ――エリはすごいよ。きっとすごい魔術師になれる。僕はエリになれないや。  そう強がった直後の返答だった。ストレートな言葉に、アルドリックは傷ついた。  検査がまだでも彼に才があることは明らかで、その彼に「自分のようになれない」と断言されたことが悔しくて、悲しかった。  けれど、自分が卑下た受け取り方をしただけだったのかもしれない。
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