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「また今度、話せる範囲で話すよ。申し訳ないけど、魔術師殿も待たせているから」
早くしないと、エリアスの不機嫌が爆発しそうなのだ。入り口付近から放たれる視線の圧が空恐ろしいレベルになっている。
「あ、ああ。そうだね」
もしかすると、彼も圧を感じたのかもしれない。引き留めてごめん、と告げた彼の顔はわずかながら引きつっていた。
まったく本当にあいかわらずだとエリアスに苦笑を向ける。
「ごめん、お待たせ。クレイさん、総務に行ったらしいんだよ。そっちも確認していいかな。すぐそこだから」
「構わないが」
戻ったアルドリックを一瞥し、エリアスは小さく息を吐いた。
「あいかわらずだな、おまえは」
「あいかわらず?」
「あいかわらず、誰とでもどこでも愛想が良い」
「ええと」
覚えのある言い方に、ぽりと頬を掻く。
遠い昔、彼が子どもらしい独占欲を発揮していた時期のこと。エリアスは、アルドリックの友人を「仲が良い」相手ではなく、アルドリックが「愛想良く」している相手と表現することがあった。
呆れるやらほほえましいやらで、当たり障りのない理由を返す。
「きみの通っていた魔術学院も全寮制だっただろう? 僕が通った高等学院も全寮制だったんだよ。だから、気心の知れた人が多いんだ。彼もそう」
高等学院時代からの同期なんだよ、と説明をする。高等学院を卒業し宮廷に勤める人間は多いのだ。
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