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「全寮制だからと言って、気心が知れる理由はよくわからないが」
「ええ、……あぁ、まぁ、魔術学院とはいろいろと違うのかもしれないな」
なにせ、選ばれし魔力持ちだけが入学を許可される特別な学院である。ロマンがあるなぁと呑気な空想を巡らせつつ、総務の部屋の前でアルドリックは立ち止まった。
「じゃあ、ごめん。確認してくるから、ちょっと待っていてくれるかな。――すみません、クレイさん来てませんか?」
開いていたドアから一歩入り声をかけると、近くに座っていた同期の顔が上がった。少し前に出て行ったことを教えられ、遅かったかぁと苦笑いになる。
「そうなんだ、ありがとう」
「彼女、どうかしたのか?」
「ううん、落とし物を渡したかっただけ。文書課に戻ってみるよ」
「そうか。おまえ、クレイちゃんと同じ課なんだよな」
「そうだけど……」
クレイちゃんとは、妙に親しげな呼称である。首を傾げたアルドリックを手招くと、彼は声を潜めて問いかけた。
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