エピソード2:人魚姫の涙

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「おまえのところだと人気があるのは、イーザックさんだよな。彼女もイーザックさん狙いだろうか」 「ど、どうだろうねぇ」  背中に刺さる視線が、またしても深くなっている。クレイに現を抜かす同期も、気がついてしまえば、庶務の彼と同じ顔をすることだろう。  ぞっとしない想像に、アルドリックは、じゃあ、と話を切り上げた。 「悪いけど、僕はここで。その話はまた今度、飲み会のときにでも聞くよ。……力になれるかどうかはわからないけど」 「なんだよ、それ」  嘆かれたところで、「だって、彼女、惚れ薬を持ってたんだよ」と明かすことなどできるはずもない。彼が対象である可能性も、ゼロではないだろうけれど。 「まぁ、とにかく、そういうことだから」  愛想笑いで誤魔化し、背中を向けた直後。深化したエリアスの不機嫌顔に、アルドリックはぎょっとした。  おまけに、総務の女の子が遠巻きに立ち尽くしている。 「ちょ、ちょっと」  エリアスを恐れて、室内に入ることができなかったに違いない。  慌てて彼を入り口から引き離し、ごめんね、と女の子に謝った。そうしてから、仏頂面のエリアスに向き直る。
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