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「ただ、その、お嬢様が飲んだという小瓶が、いろいろあってなくなったらしくて。つまり、お嬢様がなにを飲んだのかは……。いや、なにも飲まれていない可能性もあるのだけれど、とにかく不明ということで」
「なるほど」
「それで、その、うちの人間と薬草部の魔術師でお嬢様の状態の確認に伺ったんだけど、『なにかの薬で眠っているのだろう』ということしかわからなくて」
「ほお」
「それで、……その、きみならわかると思うんだけど、その状態で解毒薬をつくるのって大変なんだよね」
薬草部の友人いわく。成分が判明し、材料さえ揃っていれば、ほぼリスクなく解毒薬をつくることは可能だが、成分が不明の場合は、解析に時間がかかり、リスクも上がるとのこと。
それは、まぁ、そうだろうなぁ、と。容易に想像することはできる。
「だから、……その、ノイマン家のご当主が、ぜひ、稀代の天才と噂の一級魔術師殿に、お嬢様の命運を託したいと仰られていて」
その勢いに薬草部が押されたというか、ちょうどいいと押しつけようとしているというか。曖昧な笑みを保持するアルドリックを一瞥し、エリアスは長い足を組み変えた。
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