5.ルアルと精霊王様

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 精霊王様が僕の林檎をシャクリとかじると、目を見開いて驚いたような顔をしていた。   「林檎の君、ルアルを好きになってくれてありがとう。お礼に……」    僕の幹に精霊王様が手を当てると昼間に感じる強い力が流れ込んできて、ぐぅぅっと幹から押し出される感覚がした。   「あ、え、なんで……」 「林檎の君は私の光を受けてヒトの姿になっているようだったからね。私も会ってみたかったから力を分けてみた」 「せ、精霊王様、と……とんだご無礼を……」    僕は慌てて地面にひれ伏そうとした……んだけど、ルアルに背中からがっしり押さえられて伏せることができなかった。   「アイツが勝手に来て、勝手に姿を変えさせたのにこっちがそんなことする必要ない」 「で、でも……」 「私は今は可愛い弟の愛霊を見に来た身内だ。かしこまらないでほしい」 「はぇぇっ……!?」    僕がルアルを振り返ると、彼はいつものような透き通る肌にほんのり朱をにじませて目を逸らした。でも違うとも言われないし僕を抱えた腕も解こうとはしない。そういうことって信じてもいいの……?   「林檎の君がこんな愛らしい子だったなんてね。うちのルアルがいつの頃からかソワソワと追っかけ回してるから気になってはいたんだけど……」 「いつの頃からか……?」    えっと、どういうことだろう。僕とルアルが知り合ったのって最近だよね?  いや、まあ、僕はずっと見てたけどね。あ、でも僕が見つめ続けてたのってルアルは知ってたんだったっけ。もしかしてそれでソワソワさせちゃったりストーカーは誰だとかって思わせたりしちゃったってこと? ……だったらちょっとごめんなさいって感じだよね。  
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