6.どういうことなのっ

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「ぼ……僕はルアルが嫌なら行かないよ」    そう小さく呟くとルアルの腕が僕をキツく締める。  僕の第一優先はルアルだ。一緒にいたいけど、ルアルがとても嫌だと思っているなら、それはあまりしたくないなって思う……。   「俺には……ソゥ兄以外にも兄弟がいて……俺に顔が似てるやつとか手が早いやつとか。そんなところにお前を連れてくのは……」 「末の可愛い弟の初めての愛霊に私が手出しさせると思ってんの? お兄ちゃんそんなこと許さないよ!? それにこの子はそんな移り気な子じゃないって、ルアルが一番わかってるんじゃないか?」 「俺は顔くらいしか取り柄がないことくらい自分でわかってんだよ。だから……」    僕は僕を抱きしめるルアルの腕にそっと手を重ねた。一瞬びくりとしたけど、ルアルはそっと腕を緩めてくれた。僕はその腕の中でくるりとルアルの方を向いて向き合うと、背中に手を回した。ルアルのサラサラの髪の毛が僕の手をくすぐる。   「僕……どんなに綺麗なヒトだったとしてもルアルじゃなきゃやだよ? 一目惚れだったのは確かだけど、でもだからって誰でもいいわけじゃないもん。じゃなきゃ、根っこ移動させてまで何年も見てないし……えっと……精霊王様だって綺麗だけどやっぱりルアルに感じる気持ちとは違うし、だから、その……」    ルアルは僕をまたきつく抱きしめてくる。  あれ? ずっと僕が一方的に大好きで、だからそれを見抜かれてルアルに食べられちゃたのかと思っていたのになんか違うかもしれない……?  まるで僕を誰にも取られたくないって全身で訴えてるみたいで、ふわふわとした気持ちになってくる。  そう思ってから振り返れば、精霊王様をただうざったく思っているように見えたさっきのやり取りも……僕から精霊王様を遠ざけるため、だったの?   「ほら、林檎の君も困ってるじゃないか。そんなに心配ならルアルの部屋に私が行こう。それならいいだろう?」 「なんでそんなにこいつを連れて行こうとするんだよ。関係ねぇだろ」 「お兄ちゃんもルアルのかわい子ちゃんともっと話したい! 家族みたいなものなんだから仲良くしたい!」 「いらねーから」    ……えーと、なんかもう面白くなってきちゃったな。  ルアルって……言ったら怒られそうだけど、こんな可愛いヒトだったんだ? どうしよう、もっと好きになっちゃうよ。
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