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9.お呼ばれ
「アーフェル、起きてくれ。俺、そろそろ姿が保てないから」
「あ。ルアル……」
「やばいな。腕の中にお前を包んだまま寝る幸せを知っちまったから」
「僕も今まで生きてきて一番幸せかも。でも欲張りになっちゃいそう……」
ルアルの姿が半分透けている。また月夜にならないと会えないんだよね? 寂しすぎる。でも起きたら一人ってことにならないように起こしてくれたルアルは優しい。
「アーフェル、待っててくれ。また迎えに行くから」
まだ空は一部が赤くなりだしたくらいで太陽は昇っていないけど、ルアルの身体からは昨夜鏡が発していたチカチカが散っていってどんどん薄くなっていく。
これは切ない。でも初めてルアルとシたとき、きっと僕もルアルにこんな気分を味わわせたんだろうなって思う……。
僕はルアルのいなくなったベッドの上でぼーっとしながら陽が昇るのを見ていた。
◇◇◇
「迎えにくるって、またデートするってことだと思ってた……」
「嫌だったか?」
「そんなことないってわかってて聞いてるよね?」
「まあな」
僕は精霊城のルアルの居室に招き入れられていた。
小さな精霊の光がせわしなく飛び回っている。
これから僕たちの儀式とお披露目がある……その、僕たちが伴侶となるっていう……。ルアルはあの夜のあと、絶対に僕を離さない、というか囲い込むことに決めちゃったらしい。あのときのことは、僕だって幸せで幸せで片時も離れたくなくなったから気持ちはわかるんだけどね。
「でも僕、ルアルは僕をここに連れてきたくなさそうだって思ってたから」
「付き合ってるとか付き合い始めとかだとマジで横から手を出すヤバいのがいるんだって……。アイツはクズだから近寄らないようにな。でも伴侶となれば話は別なんだよ。契約が伴うから」
「そうなの?」
「そこには神の力が介入するからな。人間と違って俺等は神の影響を受けやすい。だからこそ契約しちまえば横槍はいれられなくなるんだ」
精霊界の法則とかは僕にはよくわからない。だって下っ端の林檎の木だしね。
ていうか、僕みたいなただの林檎の木がルアルみたいな上位精霊の伴侶になっちゃっていいのかな。それだけが不安でしょうがない。ルアルは気にしなくていいって言ってくれるし、精霊王様も問題ないって言ってくれたんだけどさ。
「アーフェル、また自分なんかがとか考えてるだろ」
「えっ、あ、いや……その……」
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