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「俺が、お前じゃないと駄目なんだ。だから……そんなこと思わないでくれ」
僕はルアルに抱きついて「ありがとう」って言った。
こんなにも僕を思ってくれてるなんて知らなかったんだ……だって、僕みたいな精霊なんて数えきれないくらいいると思うしね。
正装のルアルは……僕からしたら近寄りがたいくらいの神々しさだった。あまりにも俺が横に立つのが不似合いすぎて最初は後退りしたくらいだ。でも、ルアルは僕がプロポーズに頷くまで絶対に逃さないって感じで、僕の腰に回した手を離さなかったんだよね。
えっと、実は……ちょっと監禁に近かったとも思えなくもないくらいルアルの部屋から出してもらえなかったというか……。頷かざるを得なかったというか……。
僕だってルアルにそんなこと言われて嬉しくないはずがないじゃん。でも、これはごく普通の精霊からしたらわかると思うんだけど、城に住むような上位精霊とじゃ格が違いすぎるんだもん。ただの恋愛と訳が違うから戸惑っちゃって。
精霊の婚姻は珍しい。そりゃそうだよ、上位精霊は神の手が加わっていることが多いけど、精霊ってのは今や自然発生的に生まれるもので誰の介入も必要としない。僕達みたいな下位の精霊なんてそんなもんなんだ。
だから、人間みたいに繁栄のために婚姻が必要なこともなくて、形式だけ残ってるって感じ。
たまにどうしても特別な関係になりたくてっていう下位精霊たちが婚姻の儀をあげる場合があるのは聞いたことがあるけど……奔放な精霊のほうが多いからかなり珍しいと思う。
上位精霊の婚姻なんて、それこそ僕がまだただの木から出られない光の粒だったときから思い返しても、一度も聞いたことがなかった。
当たり前だけど、そんなだったから僕が頷くまでちょっと時間がかかったんだ。ダメ押しは精霊王様だったかな。ブラコン爆発でヤバかった……。ルアル曰く、精霊王様のブラコンは自分にだけ向いてるって言うんだから不思議だよね。
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