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10.婚姻の儀式
「アーフェル、そろそろ時間だ」
僕はルアルに手を引かれて城の神殿の間へと連れて行かれる。そこは室内のはずなのに天井からは光が降り注いで花が咲き誇る不思議な空間だった。
「うわぁ……」
「そんなのに見惚れないでこっちを見て」
え、なんでそんなにムスッとしちゃうの? 天井に嫉妬しないでよ……なんて少し思うものの、ルアルに向けられるどんな感情ですら嬉しく思えちゃうのは……『認識されてない』と思って見つめていた期間が長いからなのかな。
天井なんかと比べられるもんじゃないのにって思って、むしろ微笑ましい。近寄りがたかった冷たい彫刻みたいな『憧れの君』が実は全然そんなことなくて、この間から大好きだって気持ちが溢れて止まらない。
ふと前を見れば、ブラコン様……じゃなくて精霊王様がちゃんと精霊王様然として、僕達を祝福するために立っていて、僕たちが側まで歩いていくのを待っていた。その目はルアルを優しく見ていて、ああ、本当にルアルのことが好きで好きでたまらないんだななんて他人事みたいに思ってた。
「ソゥ兄に祝福されなくても婚姻はできるのに……」
「ちょっと! 一応精霊王様なんだよ?」
「だってこんな大々的に儀式されたらアーフェルが他の精霊に見られちまうだろ!」
ルアル……嬉しいけどもう少し大人になろう?
これが終わったら横槍入れられなくなるって言ったのルアルなのに。
「僕は……ルアルが僕のものだってみんなに知ってもらえるから嫌じゃないよ?」
「アーフェル……今すぐベッドに戻」
「だめ。はい、前に進もうねルアル」
エスコートするように腕を出しているのはルアルだけど、ルアルを押すように歩く僕。儀式をビビりまくってたのは僕のはずなのに……。
会場である精霊城は今日に限っては一般にも開かれていて、名前のない下位精霊も入り放題だ。なんなのこのお祭り騒ぎとか思ったのは言うまでもない。でも僕たちみたいな下位精霊が、滅多に入れない城に行ってみようとか思って騒いじゃうのもしょうがないけどね。
あ、あそこに知り合いがいる……。めちゃくちゃ驚いた顔して僕のこと見てるじゃん……って、そりゃそうか。僕が当事者だなんて自分でも驚いてるんだから。
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