10.婚姻の儀式

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「ルアル、アーフェル、こちらへ」 「はい」 「……」 「これより婚姻の儀式を始めるが、契約が完了すると破棄をするためにはそれなりの代償が伴う。それには異論ないか?」 「ありません」     ルアルの態度は相変わらず。でも一応は言い返さないように気をつけてるみたいで可愛い。精霊王様の歌うような旋律の祝福の言葉が始まって、みんなが聞き入るなか続いている。こうして見るとやっぱり精霊王様は威厳があって神々(こうごう)しいなって思う。  祝福の言葉が最後の節に入ったとき、ただでさえ光が降り注いでいた天井から僕とルアルだけを照らす光の筋が伸びてきて包み込まれた。   「これをもって、ルアルとアーフェルはお互いを唯一の伴侶とする契約を結んだ。何人(なんびと)もこの契約を脅かすことはできない」    精霊王様の言葉もそうなんだけど、僕とルアルが二人でひとつになったような不思議な感覚が続いている。これはルアルのエネルギーなのかな……ちょっと強くてクラクラする。   「アーフェル?」 「ん。大丈夫……少し目が回ってるだけ……」 「ルアルと核が繋がったからだな。ルアル、少し休ませてあげなさい」 「ああ……」    僕はいきなりルアルに横抱きにされてワタワタしてしまった。だって、こんなみんなの前で……。  いくら伴侶としてお披露目したからといって恥ずかしくないわけじゃないっ。儀式を見学してた精霊たちがざわざわしてるもん。   「こら、落ちたら危ない」 「だ、だ、だって……」 「こうして今出ていったら、そういうことって思われそうとか考えてる?」 「う……」 「本当にそうしたいところだけど、さすがに今のアーフェルにそんなことできないっての」    ルアルの居室に連れて行かれた僕は、そのあとルアルの精霊力が僕に馴染むまで数日寝て過ごすことになった。えっと……最後は我慢の限界だったルアルにまた食べられちゃったんだけど……。    僕はあまり本体の木の方には戻れていなかったんだけど……というか、今は本体が僕でそこに繋がっているのが林檎の木っていうように逆転しちゃったんだよ。これは僕とルアルの核が繋がっちゃったからなんだけどさ。  でも、やっぱ僕の木だからね。気になって時間ができたときに見に行ったんだ。そしたらなんか僕の林檎が……。  
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