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僕とルアルは姿が見えないのをいいことに、人間たちに混じって話を聞いていた。月の力とか言われて、僕は思わずルアルを見上げる。
「あ、つまり、僕がルアルの伴侶になったから特別になったってこと?」
「それだけじゃあ、ないなぁ」
どういうことだろう? どう考えてもそれしか思い当たらないのに。
「アーフェルの林檎が美味くなったの、いつからか覚えてないのかよ」
「いつって?」
「だから……」
人間の真ん中で僕はルアルに軽く口づけされた。
何度しても慣れなさそう。だっていつもこんなにドキドキして軽いキスだけでもこんなにトロトロにさせられちゃう。
「俺たちが愛し合ったあとからだろ?」
口づけの余韻に浸っていた僕の耳元でルアルが小さく呟く。
ポンっと頭が弾けたみたいになって急に猛烈な恥ずかしさに襲われた。
そ、そういえば、ルアルに「前より美味くなってる」とか言われた……あと……精霊王様はかじったあと驚いて「ルアルを好きになってくれてありがとう」って言ったんだった……。
え、そのせいなの? や、やだ、なんか色々バレバレみたいで恥ずかしいっ!
「うわーん、だめぇ」
「人間には聞こえないっての。まあ、特別なのもしょうがないだろ? もうこの先美味くなる一方なんだから」
「ふぇ?」
「俺がアーフェルを真っ赤にさせて甘く蕩けさせ続けるっつーてんの」
あうう……。
嬉しい、けど、僕どうしたらいいんだよぉ。
『王室お抱えの精霊士と国王陛下がこの林檎に特別な名称を与えたのだよ、ネイト神官』
『え、もうそんなことに?』
『アルテミスルージュを冠して良いとね』
『あー、月の力だからですか? 確かに深い赤がルージュのようですね』
『最初に報告してきた庭師は月夜に光り輝くのを見たと言っているし、どうやらこの林檎は月夜に食べると昼とは味が全然違うらしい。というものの、うちの庭にあるのに私はほとんど食べられてないんだよ』
人間の話はびっくりするようなことばっかりだ。
というか、なに……アルテミスルージュって……。勝手に名前つけてくれちゃってさ。
「僕はアーフェルなのに」
「人間は知らないからなぁ。月の女神のルージュか……可愛いじゃねぇか」
「月の女神様なんて恐れ多いでしょ。それに僕の伴侶はルアルだよ」
でも僕と月をセットにしてくれるのは少しだけ嬉しいかな。
……けど。
「ルアル、部屋に戻ろ? ……その……触れてくれる?」
「アーフェルに誘われて断れるわけないだろ」
僕たちのイチャイチャが林檎の味に直結するのは恥ずかしい。だけど、あんな話してたら触れてほしくなってきちゃって僕はこっそりルアルに耳打ちして、ルアルは意地悪そうな嬉しそうな笑顔を見せた。
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