11.月夜の林檎は甘く色づく

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 ◇◇◇    それからかなりの年月が経って、僕の木は林檎としては珍しいほどの巨木になって……今や御神木扱いなんだけど、なにこれ。    僕の林檎は奇跡の林檎と呼ばれている。  食べれば病気にならないだとか、幸せになるだとか、恋が叶うだとか、人間が作ったいろんな逸話がくっついてきてるけどね……。    実際の林檎の効果はどうだかはわからないけど、相変わらず僕はルアルに愛されまくって、僕もルアルに沢山愛を囁いて毎日幸せでたまらないのは事実。この僕が感じてるこの幸せが林檎を通じて人間に何か影響を与えてるのかもしれないってやっと最近思うようになったんだ。遅すぎるかな。でもしょうがなくない? 無意識だもん。  僕の林檎は精霊士じゃない人間にも精霊の力を分け与えてくれるって言われてるらしいんだ。ほんと不思議。    最初の頃、僕を独り占めしようとした王家はいつの間にか消えてた。僕の木を移動させようとしたからね……。それがすごく嫌だなって僕が思ってたらそんなことになっちゃってて、ルアルがめちゃくちゃ笑ってた。  あの『アルテミスルージュ』とかいう変な名前はしばらく残ってたけどねぇ……。    長い年月の間にそういうことが何度かあったんだ。普通の木なら植え替えもできるかもしれないけどさ、僕には意思があるんだよ。あの場所はルアルとの思い出の場所だから離れたくないんだ。そうやって、移植しようとすると悪いことが起こって林檎の味がなくなるからって移植は厳禁って言い伝えられるようになったみたい。  それがどうして御神木扱いになったのかはさっぱり謎だけど。僕は神様とは縁もゆかりもないよ? 変なの。    ルアルは僕と婚姻してからだいぶ口調も大人しくなって態度も落ち着いたとかで、なんか僕はやたら精霊王様に感謝されてる。僕は何もしてないんだけどね。  精霊王様以外の兄という上位精霊たちにも会ったし、二人でいろんなところにお呼ばれすることも増えたけど、今はもうルアルが前みたいにあちこちに威嚇しまくるようなこともない。    あ、さすがに精霊王様がルアルを構いすぎると前みたいになるかな。  でも懐かしくて微笑ましくて、僕は笑いながらそれを見てる。        これは絶対叶うことがないと思ってた恋が成就した僕の風変わりな運命のお話。 ********** 完結までお読み頂きありがとうございました。 ただの甘々林檎ちゃんでしたが、私は書いててほこほこしてました。
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