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「次はいつ会えるかな……」
「約束はできねぇからなぁ。でもお前を泣かせたくはない、かな」
「泣かないよ」
「ついさっき泣いてたやつがよく言う。でも、ま、次はヤルぞ」
ヤルって……前は食わせろだったのに、その、表現が……。また身体がぽっぽと熱を持ってくるのがわかる。
「え……あ……」
「だから、そういういい匂いを撒き散らすなっての。ちゃんと次は優しくしてやるから」
「!!」
絶対また全身真っ赤になってる気がする……。恥ずかしくてぷるぷるしている僕を抱きしめて、「今日は時間切れだ。またな」と言うと彼が深いキスをくれた。
……と思った瞬間に僕は木に戻っていて、彼はキラキラと銀糸のようなプラチナブロンドの髪の毛をなびかせて前みたいに闇に溶けていった。
◇◇◇
彼の事情を聞いたからっていうのもあって、不安でしょうがなくてってことはなくなった。それに、この間、彼は僕を抱き寄せてとても優しく話してくれたから。
今の僕は以前より空を見上げることが増えたなって思う。前は屋敷の探索をよくしてたけど、今の僕は雲がないか、月の出月の入りはいつなのか、ちゃんと月の光があの窓に射し込むか……そんなことばかり考えてる。
「よう……」
僕が木の姿なのにルアルがここに来てくれた。
腕を伸ばしたい、抱きつきたい、会いたかったって伝えたい……なのにできなくてもどかしい。
「最近会えてないからお前がまた泣いてないかって心配で見に来てみた」
嬉しい。
僕はサワサワと枝を震わせて林檎の実を一つルアルの元に落とす。
「くれんのか? でも俺はあっちのお前が食いたいんだけどなぁ」
ルアルはそういうとまた前と同じように僕の根本に腰を下ろして、服で林檎の実を擦ってかじりついた。シャクシャクと音を立てて無言で食べている。
「なあ、前と全然違うぞ? 蜜入りになってるし皮が薄くなって柔らかいし甘みが増してみずみずしい。果汁があふれる……既になってた実ってこんなに変化するもんなのか?」
ルアルが何を言っているのか僕は全然わからない。僕は何もしてないし庭師が肥料をくれたこともないもん。別館の土地に人間が来ることはほとんどないんだからね。
「ルアル、そんなに美味しいのかい?」
どこからか声が聞こえたかと思うとルアルの後ろに柔らかな光が集まって、強い光を放ったかと思うとヒトの姿に変わっていく。眩しい光が落ち着いたとき、僕はもうびっくりしてしまって木の中で硬直していたんだ。
「ソゥ兄……なんで来やがる」
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