2.その常套句、いただくわ

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「出来れば侯爵家まで護衛したいところですが、きっと婚約破棄した元婚約者に送られたくはないでしょう。侯爵家へは連絡を入れておきますので、迎えが来るまではごゆっくりなさっていてください」 「あ……、え」 “違うの! そうじゃないの!”  動揺で上手く声が出ない。  今引き留めなければかなりまずいということはわかるのに、喉がカラカラに乾き張り付いてしまっている。 「では失礼いたします」 「待っ」  ペコリと頭を下げたコルンを呆然として見つめる。  背筋を伸ばしたままカフェを出るその姿は彼の指先までもを格好良く見せ、何一つ現実感はなかった。  ――ただわかるのは、私の目の前に残された婚約破棄合意書が本物であり、紛れもない現実として私の目の前に残されていることだけである。
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