3.もう遅くとも

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3.もう遅くとも

「は、はぁっ!? 婚約破棄された!?」 「ちがっ、まだ、まだ書類に印は押してないもの! 不成立よっ」 「それもう最終勧告受けてるじゃない」  動揺した私が婚約破棄合意書と共に駆け込んだのは、もちろん友人であるエリーの家、フィオリ伯爵家である。  いつもは塩対応で私の話をほとんど全部聞き流しているエリーだが、流石に予想外だったのか珍しくお気に入りの読書を止めて私の方へと向き直ってくれた。   「で、なんでそんなことになったのよ?」 「エリーに借りた小説の真似をしたら……」 「創作物は創作物って言ったでしょう!? で、なにやらかしたの」 「き、君を愛するつもりはないって言いました」 「バカ決定」  はぁ、と思い切りため息を吐きながら頬杖をつき呆れた顔を向けられた私は思わず俯いてしまう。   「大体私は、三角関係の本で大人の余裕を、平民からの逆転劇で健気に思い続ける大切さを学んでほしかったのよ」 「君を愛することはない、は?」 「そんなバカなことをしないようにの釘さし」 「うぐっ」  まさかあの一瞬でそんな意図を込めて本をピックアップしてくれていたとは。
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